頼む!あともう少しだけ

全てがナンセンスです

タバコの匂いが好きすぎて困る

今はいっさいしないのだが、昔はちゃらんぽらんなままパチンコをしていた時期がある。行ったことのない人にはわからないかもしれないが、パチンコ店といえば、独特の匂いがするものだ。複数の銘柄のタバコが入り交じった匂いであり、客の体臭である。それをどうにか軽減しようとする店の空気清浄機。これらが絡まって何か複雑なものになった、そういう匂いだ。だが、最も強いのはタバコの匂いだろう。

 

パチンコを打つ人間は、私見だが、だいたい7割位がタバコを吸っている。リーチがかかったら一本吸い、それが当たったらまた取り出して吸う。そして外れると、やはり吸うのである。多分、興奮を抑えるためにタバコに手が伸びるのであろう。タバコとパチンコは切っても切れない関係にある。私が辞めるころには分煙がしっかりしてきたが、昔は隣の台でタバコを吸う人間が居るときは、もろに副流煙を受けたものだ。

そういうわけで、私の行く店内はタバコの煙で充満していた。髪にも服にもタバコの匂いが染み付いた。多分、私の体内にも染みていた。それでも気にならなかった。あの時はパチンコが楽しくて仕方なかった。

それどころか、パチンコにハマった私は、タバコの匂いにもハマりつつあった。いや、もともと好きだった。だから吸い込めれば副流煙でも構わなかったのだ。

だが自分でタバコを買ったことはない。タバコが健康に悪いと知っていたし、祖父が肺がんで死んだことを知っていた。私は自分から健康を害したいと思わなかった。パチンコを打つために、仕方なく吸ってしまっているということにしていた。パチンコ屋に副流煙を吸いに行っていた可能性も、大いにあるのだが。

それにタバコに金を払うくらいなら、パチンコに注ぎ込みたかった。書いてみると、なんとも馬鹿馬鹿しい考え方であるが、当時は本気でそう思っていた。今思えば依存症にかなり近い状態だったように思う。

パチンコを打たなくなった今、タバコに接する機会はかなり少なくなった。しかし、ふとした瞬間にタバコの香りが鼻につくと安らぐことがある。そうした瞬間に、思うのだ。パチンコと同じように、一度手を出せば、私は廃人になるくらいタバコを吸うのかもしれない。それはどんなに気持ちのいいことなのだろうと。

だが、私は廃人になりたいわけではない。ただ一時の快感が欲しいだけなのだ。

私は我慢を覚えなければならない。タバコによる安らぎとリスクを秤にかければ、やはり私はタバコを吸う道を選べない。ただの臆病者なのかもしれない。

好きだからこそ突き放したい。パチンコも、タバコも、私にとってはそういう存在である。